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「米初の法律事務所「米投資家を引きずり込む」 - HRMR代表 エリック・ローズ氏

ミャンマービジネス

国際法律を専門としニューヨーク・マンハッタンに拠点を置くヘルツフェルト&ルービン社(H&R)(1948年創立)が、ミャンマーへの事業拡大を決定した。新会社「ヘルツフェルト・ルービン・マイヤー&ローズ法律事務所(HRMR)」に新任したエリック・ローズ氏は「適切なアメリカのオフィスにしていく」と語る。

「会社設立のプランニングには時間を要しましたよ」

法律事務所を構えるためには多くの苦労が伴う。それでも現在は、劣悪なインフラ環境にあるミャンマーにあって外国のクライアントと滞り無く調整が出来る機材、高速ネット通信を可能にする多くの電話線、停電にも影響されない電源を見せながらローズ氏は目を細める。

新外国投資法(FIL)が施行され、外国法人として100%所有権を維持するために、ローズ氏は緻密にプランを練り上げて事務所探しに奔走した。その結果、HRMRはプロのサービス産業としては米初の投資者となった。まさに粘り勝ちといったところだろう。

 

「アメリカ流」のオフィスを

「実はこの法律事務所はアメリカ人の資金提供が100パーセントですが、新外国投資法では少し例外的な処置。もちろん、ミャンマーの投資委員会の方々からはご理解頂いてます。なので、弊社はアメリカの企業で唯一『米国法曹協会の倫理基準を適用する、アメリカ流のミャンマーオフィス』なのです。

HRMRでは、法律の中でも7つのジャンル((1)投資(2)知的財産(3)不動産(4)建築(5)インフラ整備(6)取引(7)資産管理)に係るものに重点を置いています。この試みというのは、ミャンマー進出を狙う外国人投資家にとっての拠り所になれて、ミャンマー側にとっての開発の一助となれるので、一層の支持を頂けたのです。

ミャンマーは半ば隔離状態で、開発と進行の希求も認められてはいませんでした。この国が力を発揮できる場になっているのは、H&Rが長年取り組んできた新興国経済の法的枠組み形成支援が1つの歴史として理解されたからではないでしょうか。」

 

類似の経験をミャンマーに活かす

ローズ氏は、90年代の東ヨーロッパと、ミャンマーの間の多くの共通項を感じているようだ。

「1995年、H&Rはルーマニア初の米法律事務所を開いたのを皮切りに、ルーマニア、モルドバ、モンテネグロで商工会議所をセット・アップしたんです。そこでは法案作成の支援して、米投資家を最初に招待しています。

今ミャンマーでも『法律が未整備だ』というような懸念が起こっていますが、類似の事例は他の国でも起きていたんです。HRMRの経験は活かすことが出来ます。」

ローズ氏はルーマニア生まれ。70年代に「過激派学生」とされ、国を追われることになり、フランスで政治難民としての日々を過ごすこととなった。そこから法律の道を志し、20代のうちに教育を修了。そしてグローバル化の様相を呈したこの25年以上、合併、買収、民営化、技術移転や反トラスト法など、様々な法関係の仕事に携わってきた。その後、アメリカの大手企業「タイコ・トイズ」「ジョン・ディア」等の顧問を歴任。アメリカはもちろん、5大陸20ヶ国以上の場所で複雑な業務を処理してきた。

実はローズにとってミャンマーは初めてではなく、90年代アメリカがミャンマーに対し経済制裁処置を行って密かな注目を浴びていた頃、ミャンマー市場を相手取ったタイ企業との調整という形で関わっていたのだった。

 

多数の課題とチャンス

ローズ氏はアメリカ誘致について、「投資を受け入れるためには、ミャンマーの対米輸出を支援していくことが重要」と語る。

そのプロセスをまだ前途多難なミャンマー発展へのプロセスを「全てのボートを同時に護岸に引き上げていくような作業」と表現する。

「2002年にミャンマーはアメリカへ75%もの衣料を輸出していたのですが、経済制裁下では、実に300超の工場が閉鎖。また、ほぼ女性で占めていた85,000人の労働者が職を失い、その余波は50万人にも影響したと言われています。

ただ現在、人件費等の高騰が続く中国、その中国に次ぐ2番目の衣服メーカーを擁しているバングラディシュも芳しい状況ではなく、4番手に付けるカンボジアでも決して人口は多くない。周辺諸国のそれぞれも問題を抱えています。

それに対しミャンマーの状況もエネルギー不足は深刻で時間は掛かるが、豊富な資源や、教育さえ積めば労働力となりえる学力をもった人々等、莫大な可能性を秘めている。安全な情勢となったミャンマーがデメリット面を克服出来たら、衣料産業に切り込む余地は十二分にある。

ミャンマーにおいての再生可能エネルギーはかなり魅力的で、天然ガスの埋蔵量は世界10位のランクを受け、水力発電、風力発電、太陽光発電も利用可能な環境下にある。前政権下ではほとんどの天然ガスは輸出してしまっていましたが、今は自国での使用を優先するべきです。」

 

富裕層の資産管理に自信

「HRMRの資産管理では通例、ターゲットは上層部を狙っています。ミャンマーという国は単に資源量を見ただけで裕福だ、と決めてはいけません。多くの個人が、貯蓄する人にとって有利になる資産利用や保護等のアドバンテージを受けられる資産を持っています。ミャンマーでは約5%が富裕層で、10~15%が中間層と考えられています。資産を持っている人はいますが大半の人がタンス預金で、ミャンマーのためにお金を遣っている状況とは言い難い。

ただ、この体質は変えられるもの。先日、ミャンマー政府が総計約70億ドルもの外資が入り込んできていると発表していましたが、まだ使用用途のない巨額のこの外資があれば、この状況は変えられます。ミャンマーは、自国の資源のみの活用で1兆ドルもの資金をつくったノルウェーのように、国債発行で賄えるようにまでになりますよ。」

 

HRMRを支えるエキスパートたち

アンドリュー・グン・チャン・ライアン氏はHRMRでは常務取締役としてミャンマー人の弁護士や、5人のアメリカ人スタッフを束ねる。アメリカで教育を受け、ミャンマー政府とチン民族戦線(CNF)の和平交渉時は政府側の本部長として臨んだこともある人物だ。さらにジョーホー氏は、ミャンマー民事訴訟・刑事訴訟のエキスパートとして、HRMRでは訴訟に関するシュミレーション等を熱心に行っているが、彼は国民民主連盟(NLD)中央委員会のメンバーでもあり、事務局長であるアウンサンスーチー氏やニャンウィン氏の代弁者も務めていた。

HRMRと他の法律事務所の明確な違いは、「公務員がいない」ということだ。

「通例ミャンマーの法律事務所は公務員も詰めているそうなんですが、居ないことは逆に強みになっています。政府に関する案件について互いに議論出来る。どんな事象でも偏った方向にいかず、完全中立で物事が進められるんですよ。」

 

少数民族との和平交渉と、これからの改革について

「現在のミャンマー政府は、少数民族問題について尊厳と真実を持って対応できると思います。「和平工作」ではなく「和平交渉」が出来る。ミャンマーでは平和とされる時代が長く続いていないことは否定できないですが、今は平和に向けた最終段階のところまで来ているんです。

私たちは、それに向けたステップを確認して、支援する価値がある場所だと思ったので、現にこうして来て、お金を費やしてるんです。ここミャンマーでも貢献出来ると確信しています。H&Rは色々な国で法の導入支援に携わり、ベトナムではアメリカから最初で最大の投資を導いて、ブルガリアでも同様のことをしてきたのだから。」

 

ミャンマー国民による決定が急務

政府への助言という点で、ローズ氏は具体的な方策についても正確な指摘をするのだった。

「必要なのは『ミャンマー国民によって決定』できることです。民主主義というスタンスであれば、少なくとも平等に政治参加が出来るように構築しなければなりません。他の地域を自分の足で行って見てきてください。自ずとどのルールに従えばいいか、判断することなんて出来なくなりますよ。

なので私は、『他のものが行うこと(外国のモデルや外国からのアイデア)を行うべきだ」とは決して言わないんです。ミャンマーの人達が自分たちで問題点に到達して自分たちで解決する以外、根底からの発展とは言えないでしょう。今までは皆で同じテーブルに着くことさえ出来なかったので、今は幾多の問題を早急に解決しなければならない状態。そのテコ入れを政府が始めているのです。」

牛歩のアメリカ

日本の投資家が熱を上げて東南アジア広域で再建プロセスに着手した頃、アメリカ投資家の人達はミャンマー投資ブームを静観しているだけだった。日本の大手企業は自動車業界からIT業界に至るまで不況の動揺は蔓延して海外に目を向け、日本の投資額約200億ドルが世界に渡っている状態だと言われるが、なぜアメリカの投資家は進出して来ないのだろうか。

「ミャンマーは長い間閉ざされていた国なので、5W1H細かいところまで事情説明をしていかなければいけないのです。アメリカの銀行は、まだ米政府の経済制裁保留決定の旨を了承しきっておらず、ミャンマーとの取引を嫌っています。」

 

タイを起点にアメリカ投資家は動く

「そこからが私たちの仕事です。用心深いアメリカの投資家のアプローチで、ポイントになってるのはタイです。タイには、しっかりとした基盤を持ったアメリカの商工会議所があるのです。

ミャンマーが投資を保証し、二国間条約結んでいる7ヶ国のうちの1ヶ国がタイ。

したがって、アメリカ人の多くはタイからビジネスをスタートして、それから、ゆっくりミャンマーにシフト。その時、2つ3つ良いコンテンツは見つかるのでしょう。ただし、きっと本質的な投資先の発見には至らないと思います。

彼らは製品需要が十分高まった頃に、一気に中国、インド、マレーシア、タイの仲介業者を追い払って資本投資を行っていくのかもしれませんね。

アメリカの投資家は、プランニングが好きなんです。これは自分自身の経験則ですが、アメリカの投資家は狙いを定めると、牛のように直ちに、総力で、ゆっくりと迫ってくるのです。」

ローズ氏は最後に、アメリカ投資家へのメッセージも込めてこう締めくくった。

「日本のユニリーバは工場を造っている、日産は自動車製造プラントまで造っている。でもそれを見て『俺たちの知らない何をこの男たちが知ってるんだ?』と言うアメリカ人もいるのでしょう。それでも、ビジネスはビジネスなんですよ。ただ来るだけですよ。米政府が既に支援態勢にある今、アメリカにとってのビジネスはここにあるのですから。」

 

MBT独占インタビュー記事
【 2013年10月24日(ヤンゴン)記者:Sherpa Hossainy】

 

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